アセットマネジメントの流れ
先ず不動産ファンドの運用戦略を立てた後に運用戦略に即した物件を取得します。
取得時のファイナンス(デット、エクイティ)もアセットマネージャーの役割になります。
取得後の物件管理についてですが、
物件に入居しているテナントの管理や物件共用部(例:エレベーター)の管理まで一貫してAMが担うのは厳しいです。
そこで、各セクションごとにプロへアウトソースします。(AMがアウトソース先を選定)
テナントの募集、管理を担う「プロパティマネージャー(PM)」と
建物設備、共用部の管理を行う「ビルメンテナンス(BM)」と連携して保有期間中の管理・運用を行います。
保有期間を終え、売却時のファイナンス(リファイナンス)もAMの重要な役割です。
★アセットマネージャーの責務から解るように、不動産投資において大切な事は、短期的な利益ばかりに目を奪われることなく、
中長期の視点で安定性や成長性、特に「利用」の側面からの視点を持つことであると言えます。
デューデリジェンスとアンダーライティング
1
物的調査
対象不動産の周辺地域や利用状況の調査。取得後のテナント募集(リーシング)戦略に役立てる。
2
法的調査
権利関係(取得予定不動産の売主)賃貸借関係(テナントの内容)遵法性(建物用途に即した建築物であるか、どうか等)
(特に遵法性調査では建物本体やエレベーター等の「建築確認申請」「確認済証」「確認通知書」「検査済証」の発行、手続きが行われているかを確認し、現在の建物用途は変更手続きを経ているかの確認も必要です。)
3
経済的調査
マクロ・ミクロ双方の観点から見たマーケット調査に始まりテナント調査(信用力等)賃料推移調査等。
賃料には新規賃料継続賃料の2種類があり、新規賃料は「募集賃料」と「成約賃料」に分類されます。
募集賃料に対してテナントサイドの交渉が入ったりすることで、募集賃料と成約賃料の金額に乖離が生じることがありますので、
募集賃料だけではなく、成約賃料についても調査する必要がありますが、日本の賃貸不動産市場において成約賃料の情報源が少ないという問題があります。
継続賃料は新規賃料に比べて変動が少ない傾向にあります。
(新規賃料の変動幅と既存賃料の中庸を取って更新時の賃料価格合意が形成されることが多い為です。)
☆金融商品のデューデリジェンスと比較すると遵法性調査の有無が主な相違点と言えるでしょう。
アンダーライティング
組成するファンドの投資商品としての投資分析を行うことを指します。
デューデリジェンスで得た取得予定不動産の情報とローン条件等を勘案して投資商品の内容を決定します。
ローン条件等を勘案する際のレンダー選定において、競争入札はフィナンシャルアドバイザーが行う場合もありますが、
アセットマネージャー自らが入札を行う場合もあります。
また、ローン条件からだけでなく、投資商品利回り等から逆算してAMの物件取得価格を求めるのもアンダーライティングの一環となります。
アンダーライティングの後、ビジネスプランの策定に入ります。
◎ビジネスプランとは、アンダーライティングをベースとして売買金額やローン条件、リース戦略、修繕計画などの物件レベルでの収支(運営支出)、AM報酬などを考慮したSPCレベルでの収支、そして最終的な配当計画が記載されており、アセットマネージャーが投資家やレンダーに提示する投資運用計画の事です。
※運営支出を見積る場合はAMFeeや信託報酬等は除外すべき点に注意が必要です。
ストラクチャリングとクロージング
ストラクチャリング
投資対象不動産取得のためのスキーム構築と運営する上で必要なプレーヤーの選定することです。
スキームには、
  • GK-TKスキーム(会社法)
  • TMKスキーム(資産流動化法)
  • J-REIT(投信法)
  • 不動産特定共同事業(不動産特定共同事業法)
等があります。
クロージング
物件の取得、売却の双方を指します。
取得に際して必要な作業がビジネスプランの策定、
(アンダーライティングによって算出した購入金額やローン条件から期中の収入支出、売却後の配当金まで網羅したもの)
ドキュメンテーション(対象不動産の取得に際する各種契約書内容の検討や交渉作業)です。
取得側も売却側もビジネスプランに則り、ドキュメンテーション作業を重ねていき、物件決済まで漕ぎ着けます。
本記事では不動産証券化(不動産ファンド組成)から解散までの簡単な流れの説明をしました。
★不動産証券化における重要ポイントは「証券化スキームの選択」になりますので、下記をご覧ください。
不動産市場と一口に言っても売買、賃貸、住宅、オフィスとジャンルによって見方やアセットとしての特徴・メリット・デメリットは変わります。
本記事ではジャンル別に概要を解説しております。
不動産市場の種類と特徴
不動産売買市場
不動産売買の際に売主・買主双方気がかりなのは「相場」です。
この「相場」が不動産の場合非常にわかりづらいものになっています。他の金融商品(株式、外貨など)は公開市場なのに対し、
不動産取引は相対(当事者間でのみ情報のやり取り)のため、成約価格がわかりづらくなっており、平均成約価格を出すことが難しいのです。
その為、弁護士や会計士に並ぶ士業である「不動産鑑定士」が、
その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することが社会的要請としてあります。
公的指標
その為、エリアごと等に国が定めている各種指標がありますので、指標と大きな乖離がないように不動産業者は売買価格を算出、提案する努力義務があります。
地価公示
国交省土地鑑定委員会が発表する、毎年1月1日における標準地(都市計画区域内)の1㎡あたりの正常な価格。
(公示価格)
基準地価
都道府県地価調査によるもので、都市計画区域外(リゾート、林地等)も含まれる。毎年7月1日における基準価格。
(公示価格ではわからない郊外の土地価格が分かる。)
路線価
国税庁が発表する、毎年1月1日における道路上の1㎡あたりの標準的な宅地の価格。
(公示価格の80%程度)
固定資産税評価
市町村が3年ごとに評価替えを行う1月1日における価格。地価公示、路線価を勘案して算出する。
(公示価格の70%程度)
オフィス市場
日本のオフィス市場は東京、大阪、名古屋の順の市場規模となっておりますが、東京は大阪の4倍名古屋の10倍と圧倒的です。
また、東京オフィスビルの9割は延床5,000坪未満と中規模以下のビルが軒を連ねているのも特徴です。
住宅市場とは違う需要供給や賃料の分析が必要です。
オフィスの需要量は一般的に一人当たりオフィス面積(4坪)×オフィスワーカー数で算出するとされています。
ここで言うオフィスワーカー数は、国勢調査によって職種ごとに導き出された数字ですが、現実的な数との乖離が問題となっています。
加えて昨今ではテレワーク導入の進展というオフィス需要減少要因やサテライトオフィスの利用増加による需要増加要因など、
材料が煩雑化しているため、賃料設定やオフィスビルの新築には多角的な市場調査が必要であるとされています。
オフィスの供給についてですが、
バブル期に中小規模オフィスが乱立し現在は供給量が減少しているのに対して大規模オフィスはコンスタントに供給が続いています。
デューデリジェンスとエンジニアリングレポート
デューデリジェンス(建物の法的、経済的な調査)とエンジニアリングレポート(建物の物理的な調査)は不動産証券化に限らず、
不動産を取得する買主や購入後の管理会社(PM)にとって欠かせない作業です。
本記事ではその調査内容について解説いたします。
デューデリジェンス
オリジネーターや金融機関の依頼を受けて、
調査会社、弁護士、不動産鑑定士等の担い手が実施します。
土地状況調査
登記簿や公図による調査(現地の測量と差異はないか)越境物(フェンス、塀、植栽など)の確認、過去に越境等によるトラブルは無かったか、埋蔵物、地盤強度、土質 など
建物状況調査
築年数、構造、延床面積、法令遵守状況(建築基準法、消防法など)、修繕履歴、今後の修繕見積、再調達価格(建て直した場合の建築費用)
環境調査
アスベストやフロンなどの有害物質の含有に関する情報、土壌汚染、地下水汚染状況、日照条件、電波障害はないか など
法的調査
所有権、賃借権、占有者の有無、売買契約書内容自体のチェック、調整(ドキュメンテーション
経済的調査
対象不動産周辺地域特性、個別要因、過去の稼働率、賃料の推移(過去ー現在将来)、入居中テナントの内容 など(運用利回りに直接関係する事柄が多いです。)
※テナントの賃貸借契約内容は「賃貸借契約書」で確認する必要があります。
(所有者サイドで作成されたレントロールは事実と異なる場合がある為。)
また、取得予定不動産が「借地上」の建物である場合、借地権者への地代支払有無などをヒアリングする必要があります。(借地契約が契約書を介さず、登記もされておらず、口約束の範疇となり、うやむやになっているケースがあるからです。)
★特に経済的調査で重要なのは「アップサイド要因」「ダウンサイド要因」の検討です。これはエリア特性を鑑みてこれから賃料は上昇か、下落か、
上昇させるためにはリノベーション、コンバージョン(用途変更)など、それぞれの手段においてどれだけの上昇が見込めるか、
建物老朽化による賃料下落推移はどのようになるのか、といった期中管理における収入・支出予測に絡めて賃料(資産価値)の上下を予測する必要があります。
エンジニアリングレポート
・現地調査必須
ERは現地調査なくして作成は出来ない(資料等のみでの判断、作成はあり得ない)
・緊急を要する修繕更新項目
現地調査時において故障中や機能していないもの、建基法や消防法の違反、指摘事項の中で非常時において人命、安全に関わる事項
・短期的修繕、更新、改修費用
1年以内に改善が必要と思われる事項。
・中長期的修繕、更新、改修費用
1年以上先ではあるものの、期中(保有期間)に発生する可能性があり、準備すべき事項。(ファイナンス期間に応じた年数で算出する必要がある。)
不動産鑑定評価
不動産鑑定評価はデューデリジェンスの「経済的調査」の一環として行われます。
本記事では不動産鑑定評価基準の一部を抜粋してご紹介いたします。
取引事例比較法
その名の通り、近隣・同築年数・同規模・同価格帯といったような取引事例を収集して、地域的要因・個別的要因を勘案し、
また時点修正(取引事例の取引時点から現在までの賃料や物価の上昇・下落など)と事情補正(線路沿いである、嫌悪施設の近くであるなど)を加えて
価格を求める手法です。これによって算出される価格を「比準価格」といいます。
冒頭で説明させて頂いた通り、不動産取引は取引事例の収集が難しいため、土地&建物ではなく土地のみの鑑定手法として使われるケースが多いです。
原価法
不動産の再調達原価(今まったく同じ土地を取得し、同じ建物を建築する場合の費用)を求め、減価修正を行い、
価格を求める手法です。これによって算出される価格を「積算価格」といいます。
ここでの再調達原価には「付帯費用」も織り込むことが重要です。
付帯費用の例としては販売費、広告宣伝費、公租公課、借地の場合は地代、テナント募集費用等、
取得後にかかる費用も勘案しなくてはなりません。
収益還元法
所謂「利回り」に基づく価格算出手法で、
対象不動産が生み出す純収益を販売利回り(還元利回り)で割って算出する「直接還元法」と、
一定期間(保有期間中の1年ごと等)ごとに純収益と復帰価格(売却価格)を現在価値に割引き合計していく「DCF法」があります。
一般的にDCF法では1年毎のキャッシュフロー表を作成し、純収益に割引率を複利で乗じていきます。
DCF法
DCF法の最終的な収益価格は、想定される純収益の現在価値合計+復帰価格現在価値で出します。
(つまり、キャッシュフローが毎年一定で、建物価値も一定とする直接還元法と違い、
キャッシュフローも建物価格も時間的価値と本質的価値を考慮して価格を決めましょうという方法です。)
DCF法で求める収益価格=保有期間中の純収益の現在価値の合計+復帰価格の現在価値
純収益の現在価値=純収益×複利原価率
複利原価率=1/(1+割引率)n乗(nは経過年数)
還元利回り
利回りの設定は売主からすれば低ければ低いほど売却価格が高まるため、
買主側の視点で考えるとわかりやすいです。(希望購入価格を求める)
取引事例比較法
(例:同エリア同純収益の成約済み物件の平均表面利回りは10%なので、想定純収益÷0.1=希望購入価格 という交渉)
借入金、自己資金の還元利回りから算出
(例:借入金は5%、自己資金は10%で運用したいので、各々の割合を乗じて加重平均した%が希望利回り)
他にも毎年の借入金返済金額から希望のキャッシュフローを算出し、還元利回りを算出するなど様々な手法がありますが、
手法、というよりは買主の「事情」で購入希望価格は設定され、交渉の末に決定するモノですので、参考程度にお考えください。
直接還元法
先ず運営収益から運営支出を差し引いて「運営純収益」を算出します。
その後「資本的支出」を引き、「敷金運用益」を足し、(双方計上の必要があれば)
「純収益」を算出した後、「収益価格」で除す事で還元利回りを求めることができます。
IRR(内部収益率)
IRRとは将来得られるお金の現在の価値と投資額が等しくなる利益率のことです。
(利回りと違う点は得られたリターンを再投資、つまり複利運用する点です。)
不動産投資においてIRRについての明確な基準はなく、マーケット、投資環境、リスク特性などで変化します。
感度分析
感度分析とは、特定の変数やパラメータ(賃料、空室率、金利、運営費用等)が変動した場合に、投資のキャッシュフローや最終利益にどの程度の影響を与えるかを定量的に評価する手法です。これにより、投資のリスクや収益性をより正確に把握することができます。
感度分析を行うことで、投資家はさまざまなシナリオをシミュレーションし、リスク管理や投資戦略の策定に役立てることができます。
エンジニアリングレポートや鑑定評価の結果を踏まえてデューデリジェンスを実施し、投資戦略の策定を行います。
プロパティマネジメント
プロパティマネジメントとは、ビルやマンションの入居者(テナント)の管理全般を指します。
プロパティマネージャーのミッションは「資産価値の最大化」であり、
家賃の集金は勿論、入居中のテナントのクレーム対応(設備不具合など)、テナントの誘致・賃貸募集(リーシング)まで幅広く、
プロパティマネージャーの腕次第で投資用不動産(証券化不動産)の賃料収入やキャッシュフロー、ひいては売却価格(利回り)が変わるため、
不動産運用の根幹と言うべきポジションにあたります。主な業務内容は以下の通りです。
狭義のプロパティマネジメント
主として運営業務建物管理業務に大別されます。
運営業務
テナントやオーナーとの渉外(ソフト)
建物管理業務
ビルマネジメント(ハード)
年間予算計画(バジェット)と月次報告書(マンスリーレポート)の作成
年間予算計画は賃料収入、駐車場収入、更新料といった収入と光熱費、税金、仲介手数料、ビルメンテナンス費用等の支出の年間推移を網羅し、年間のキャッシュフローを予測する資料です。月次報告書は実際の月毎キャッシュフローをまとめたものになり、バジェットと照らし合わせて月毎にPDCAを行うための材料になります。
AMは、PMからのファンディングリクエストがあった場合は 入札手続きの要否や、レンダーの承諾要否を確認した上で支払手続きを行います。
(バジェットの範囲内でも直ちに支払うわけではないため、お互いに都度ステークホルダーへ協議する必要があります。)
テナント募集業務
テナントの募集から入居までの大まかな流れは下記の通りです。
現地内覧→申込→審査(与信)→契約書作成→契約→契約金の入金→引渡し
入居前工事
この申込~契約の間にオフィス・店舗の場合は内装工事(テナントの用途、ニーズに合わせるため)が行われることが多々ありますが、
1
A工事
貸主指定業者で貸主の負担にて行う工事
2
B工事
貸主指定業者で借主の負担にて行う工事
3
C工事
借主指定業者で借主の負担にて行う工事
の3つに大別されます。
★ABC工事に伴って発見される、リーシングにマイナス影響の要修繕箇所は「短期修繕更新費用」に分類されます。
(緊急を要する修繕費用の対象外ですので、区別が必要です。)
与信調査
入居希望者の業務内容、年商規模、移転・入居理由、使用目的、既存入居テナントとの相性(カニバリゼーションが無いか、等)を検討します。
工事カンリ業務
PMは工事管理(たけかん)、工事設計者は工事監理(さらかん)を実施します。
前者は品質や工程の管理、後者は工事と設計図書を照合し監理する事を意味します。
環境不動産への取り組み
地球規模での環境問題の深刻化が指摘されるなかで、持続可能な社会の実現に向けて、
不動産についても環境への配慮が求められていることからプロパティマネジメント、ビルマネジメントにおいて重要なミッションとなっています。
1
ESG投資
J-REIT市場のESG債発行額は投資法人債全体の80%に達しています。
2
国連気候変動枠組条約
大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を目的とし、
地球温暖化による悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた条約で、1994年3月に制定。
3
2050年カーボンニュートラル宣言
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる宣言であり、日本は2020年10月に、
政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ化を目指すことを宣言。
4
パリ協定
2015年のCOP21にて、今世紀後半にかけて温室効果ガスの排出量と吸収量を相殺する(ネットゼロ)を達成し、
世界の平均気温上昇を食い止める努力目標として採択。
5
改正建築物省エネ法
①エネルギー使用量が1,500KL/年の事業者には定期報告等の義務が課せられるようになりました。
②省エネ対象のエネルギーに「再生可能エネルギー」が追加。
③法改正で、2025年4月以降に着工する全ての建築物に「省エネ基準」への適合を義務付けることが決定。
これにより、一般住宅も含めて全ての建築物に適合義務が課されます。
適合義務:等級4以上の住宅、断熱等級5~7(ZEH基準
環境認証制度
責任不動産投資(RFI)
PRI(責任投資原則)をベースとして、不動産のライフサイクル全体において、
環境・社会・ガバナンスへ配慮し、サステナビリティを追求しようとするアプローチです。
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)
建物で消費する年間エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。
改正建築物省エネ法制定に伴い2025年度からすべての建物に適用、30年に規定水準到達を目標としている。
(住宅の場合はZEH
BEI(ビルディング・エナジー・インデックス)
建築物のエネルギー消費性能の指標であり、実際の消費量を地域や用途別基準エネルギー量で除して算出する。
(1以下であれば基準よりも優秀である。)
総合型環境認証
・CASBEE(日本)
日本における建物の総合的環境性能評価ツールで、事業段階に応じた企画、新築、既存、改修の4つの評価ツールと、
評価対象のスケールに応じた建築系、都市・まちづくり系のツールがあります。
(CASBEE建築、CASBEE戸建、CASBEE不動産、CASBEE街区など)
他国の総合的環境性能評価ツール:LEED(アメリカ)/BREEAM(イギリス)
GRESB(EU)
不動産を運用する会社やファンドのポートフォリオを評価し、ESG投資に対する配慮がなされているかを評価します。
修繕計画業務
一般に建物のライフサイクルコストにおいて修繕費・更新費は建築費の2倍相当といわれています。
年間予算計画が年毎だとすると修繕計画は期中(購入から売却まで)の計画であり、
長期修繕計画(外壁改修・空調更新・屋上防水といった高額な10年超のスパンで実施する修繕)と
短期修繕計画(1年~10年未満)の2つに分けて計画します。
特に、短期修繕費用はテナントリーシングに際し大きく影響を与える事もありますので、
(短期修繕を怠ったために適法な入居工事が叶わず、契約を取り損じてしまうなど)
長期修繕計画同様、詳細に計画を練る必要があります。
修繕
劣化した部位を新築時のレベルまで引き上げること
更新
壊れたパーツを同等品に交換すること
改修
新築時以上のレベルに引き上げること
特に大規模修繕等は金額も高額となりますので、単に発注→期日までの支払といった流れ作業でなく、
是正の指示→完了確認→追加工事を要する場合は工事の実施→再確認→支払というように慎重に進める必要があります。
ビルメンテナンス業務(5種)
建物管理業務の目標の達成はビルメンテナンス業務仕様で決まると言っても過言ではありません。
ビルメンテナンス仕様では下記5つの業務内容について決定していきます。
設備管理業務
日常運転監視業務」「定期整備業務」の2種類に分けられ、更に「常駐」「定期巡回」に分かれます。
エレベーターを例とすると日常運転監視業務はエレベーターの消費電力、走行距離の測定やカメラ監視、
定期設備業務はパーツ交換など事故防止のための修繕が挙げられます。
保安警備業務
警備員常駐の「常駐警備」非常駐の「巡回警備」、と警備システムによる「機械警備」があります。
法定点検業務
受水槽、浄化槽、消防設備(非難はしご、消火器など)は各種法令により、定期点検と報告が求められています。
定期保守業務
中央監視装置を使用して、各設備の運転・停止や状態を監視し、異常が発生した場合、現場に行って状況を確認し、必要な対応を行います。
清掃衛生業務
日常清掃、特別清掃、定期清掃に分類されます。(ビル管法の義務となっています。)
★これらの業務の品質について分析・評価することを「インスペクション」と言います。
具体的には従事者の作業品質と、受託者の組織品質についてPDCAサイクルで改善を実施します。
(インスペクションの良い点は分析評価に留まらず、改善行動に移す点にあります。)
不動産市場の種類と特徴(続き)
商業施設市場
所謂商業店舗における市場ですが、ここでは店舗の売り上げに応じた売上歩合賃料」が導入されることがあります。
これは店舗ならではの仕組みで、売上の増減に併せて賃料も増減するため、
店子のデフォルトリスク軽減と貸し手側からすれば業績好調時のインカムゲイン増加が期待できます。
また、商業施設市場では消費税増税等、マクロ経済動向も注視する必要があります。
ホテル市場
ホテル市場もオペレーショナルアセットがほとんどである為、以下の考え方が運用効率、収益率の指標になります。
  • 客室稼働率(OCC)=利用客室数/利用可能客室総数
  • 平均客室単価(ADR)=販売収入/販売客室数
  • 販売可能客室数あたり客室売上(RevPAR)=平均客室単価(ADR)×客室稼働率(OCC)
因みに、国内リゾートホテルの稼働率は8月が最も高く、1月は意外と高くありません。
(やはり年末年始は故郷で過ごす方が多いのでしょうか?)
物流市場
物流施設は昨今のeコマース市場拡大をきっかけに供給量が多くなっています。
空室率も増加しておりますが、これは賃貸借契約成立のスピードを物件供給スピードが上回っているためのものと思われます。
物流施設にはテナントの要望に合わせて設計・建設・運営する「ビルド・トゥ・スーツ型」と、
複数企業向けに予め設計・建設された「マルチテナント型」に分かれます。
ヘルスケア市場
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅があり、オペレーショナルアセットに分類されます。
超高齢化の影響を受け供給量は右肩上がりですが、自治体ごとに供給制限が設けられているので、コントロールは効いています。
供給が今後も増加する一方で供給過多になりにくい為、安定したアセットタイプではありますが、
慢性的な介護施設の人手不足や増え続ける介護給付金といった社会的問題を抱えている一面もあります。
住宅市場
オフィス、商業施設に比べて住宅市場は賃料変動が小さい傾向にあります。(インフレに強い
しかしながら日本の空き家率は依然上昇傾向ですので、J-REITのポートフォリオに組み込まれている割合は少ないです。
一方、私募ファンドなど小規模なSPVの場合は小口化販売、共同購入という意味合いでレジデンスを購入するケースも多く見られます。
★各アセットの証券化不動産シェアですがオフィスが一番多く、物流施設が次点、レジ、商業施設、が横並びでヘルスケア施設が追っている順番となっています。
★サ高住もオフィスもホテルも住宅も供給量は増加傾向にありますが、旅館は減少傾向にあります。
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